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2016年08月23日 更新

市長コラム第95回 「江の川上流大規模氾濫時」に於ける対策

 近年、激甚化する豪雨により河川の計画流量や計画高水位を超過する洪水が多発しており、今後も地球温暖化等の影響を受け更に増える傾向にあります。こうした状況を受け、国は平成27年5月「水防法」を改定し、想定し得る大規模降雨での浸水想定区域図を公表しました。また、平成27年9月の関東・東北豪雨では、想定外の豪雨により、利根川水系鬼怒川の堤防が決壊し、多数の孤立者が発生する事態となり、「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について」が答申されました。

 本市を流れる江の川水系は、中国地方で最も大きな流域を持つ河川であり、山地部に降った雨は、江の川の沿線に形成された市街地に集中することから、大きな洪水リスクを抱えております。昭和47年7月豪雨では、堤防決壊による家屋浸水や倒壊など、本市も甚大な被害を経験しました。この災害を教訓として、昭和48年3月に降雨量306㎜/2日(1/100の確率)規模を想定した「江の川工事実施計画」を策定し、基本高水を尾関山地点流量10,200㎥/s、吉田地区2,250㎥/sと定め、築堤等の江の川の整備を進めてきました。昭和49年5月には、土師ダムが完成し1,100㎥/sの洪水調節が可能となり、吉田地区流量は1,200㎥/s、尾関山地区流量7,600㎥/sに軽減され、治水に対する安全度はかなり高まりました。江の川に於ける河川改修事業は、これまでと同様に1/100確率規模の整備計画に基づき推進されますが、本市では、無堤防地区の解消や内水対策等の要望事項が山積しています。

 これら通常の治水対策に加え、今回の「水防法」の改定により、大規模氾濫時の対策が義務付けられました。江の川に於ける想定最大規模の降雨は、これまで既応最大を記録した近畿地方兵庫県の円山川の降雨量479㎜/2日を対象として考える事となりました。これは、江の川の対象流量の1,56倍、1/1000程度の確立の降雨になります。先般、これに準じたハザードマップが国土交通省より、公表されたところです。仮に、本市でこの規模の洪水が発生すると、現況の堤防は破壊され、堤防の機能は全く無くなり、土師ダムも洪水の調節機能を失います。そして、電灯・電話等通信施設は麻痺状態となり、芸備線・国道54号線・県道・中国自動車道路も混雑し、移動手段も麻痺状態になる可能性があります。さらには、これまで検討して来た通常の避難所では対応が出来ず、避難経路の確保もできない可能性があります。行政も対策本部の立ち上げが困難になることも考えられます。

 本市では、国土交通省から公表されたハザードマップを検証し、それぞれの地域に於ける避難場所の再設定を検討して行きたいと思います。避難場所を山地部に想定する場合は、土石流・山崩れ等の安全確認が必要となり、市内建造物を想定する場合には、耐震化等の構造物の強度の確認が必要となります。また、避難地区に誘導するための、道路の安全確認も必要になります。これらの検討を早急に行い、市民の皆様の安全の確保に繋げて行きたいと思います。市民の皆様の〝生命〞を守る事が重要であり、大規模氾濫を想定した平素からの訓練も必要になると考えています。 

 1/1000の確率とはいえ、地球温暖化現象等で異常気象が発生する可能性は否定できず、万が一に備える心掛けが命を救う事となると思います。これらの課題解決に向け、平成₂₈年7月に国土交通省三次河川国道事務所・土師ダム管理事務所・広島地方気象台・広島県・三次市・安芸高田市で構成する「江の川上流大規模氾濫時の減災対策協議会」を設立しました。減災のための目標を共有し、ハード・ソフト対策を一体的、計画的に推進して行きます。

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